ひでぽんの司法試験あれこれ
旧司法試験をメインテーマに、その対策や分析について、徒然なるままに書いていきたいと思います。
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平成19年度刑事訴訟法第2問分析
【問題文】

 検察官は,甲を,「被告人は,乙と共謀の上,平成19年3月4日,東京都内のX公園駐車場の自動車内で,殺意をもって,被告人において,Aに対し,その頸部をロープで絞め付け,よって,そのころ,同所で,Aを窒息死させたものである。」との事実で起訴した。甲は,公判において,「自分はその場にいたが,犯行に関与しておらず,本件は,乙とは別の男がやった。その男の名前は知らない。」旨弁解して無罪を主張した。
 証拠調べの結果,裁判所は,乙とは断定できないが,現場に共犯者がおり,これと甲が共謀したことは明らかであるとして,「被告人は,氏名不詳者と共謀の上,平成19年3月4日,東京都内のX公園駐車場の自動車内で,殺意をもって,被告人又は上記氏名不詳者あるいはその両名において,Aに対し,その頸部をロープで絞め付け,よって,そのころ,同所で,Aを窒息死させたものである。」との事実を認定し,有罪判決を言い渡した。
 以上の手続における問題点について論ぜよ。


【本問のポイント】

 刑訴法の第二問は、5年ぶりに公訴の分野、訴因変更の要否から出題された。また、択一的認定も聞かれている。
 本問はかなりの難問であると言えるが、本問のベースになった平成13年4月11日の最高裁決定が非常にトピカルなものであったため、以前から出題が予想されていたところであった。本問は現場での分析が非常に困難な問題であることからすると、事前の準備を行っていたかどうかで、大きな差がついた問題だったようだ。その意味で、帰納的に分析すべき問題だったと言える。
 ベースとなった判例とは微妙に事案が異なっているものの、前記決定と同様、択一的認定(概括的認定)の可否、訴因変更の要否が問題となる。後述の様に、その他付随的な論点も拾うことが可能はあるが、この二つがメイン論点となっているとみて間違いなかろう。

【刑訴法第2問の傾向】

 前回に述べた通り、第1問は捜査からの出題という事で安定しているが、第2問は証拠法からの出題が多いものの、その他の分野からの出題も少なくない。その中では、今回出題された訴因変更等、「公訴」の分野からの出題が多いと言えよう。訴因変更の要否については平成12年以来、択一的認定については平成11年以来の出題となっている。平成15年から18年まで、実に4年連続で伝聞法則がメインとして聞かれており、そろそろ別分野からの出題が予測されていたところである。
 第2問の問題は、捜査に比べて、あてはめの比重がやや下がり、より原理原則についての基礎知識・規範定立までの枠組みが大切となってくる。大半の場合は、そこまでで勝負が決していることがほとんどである。もっとも、訴因変更の可否の問題では規範定立部分までは暗記で対応できることから、あてはめ如何で勝負が決まってくるし、伝聞も問題文の事実を条文にあてはめられているかどうかで、点数が変わってくることから、あてはめにも注意を払うべきである。

【問題の分析】

問い=手続きにおける問題点

・ 認定事実と訴因記載の事実が異なる
⇒訴因変更を経ずして、事実認定が出来るのか?(訴因変更の要否)
・ 「被告人又は上記氏名不詳者あるいはその両名において」というかなり曖昧な事実認定
⇒罪となるべき事実の特定があるといえるか?(概括的認定の問題)

※前述の様に、現場で枠組みを考え付くのがかなり難しい問題である。
※両論点は論理的先後関係がないといえ、どちらを先に書いてもOKであろう。

1. 訴因変更の要否について
   
審判対象論(公訴事実対象説説VS訴因対象説)・・・当事者主義
⇒訴因対象説

訴因の意義⇒事実記載説
→もっとも、些細な事実の変化があれば変更が必要となると、訴訟経済に反する
⇒重要な事実の変化があった場合

訴因の機能(識別説VS防御説)
⇒重要な事実の変化
・ 識別説→審判対象を明示するという機能を害するか?
・ 防御説→被告人の防御に不利益があるか?
⇒被告人防御に不利益があるかの判断基準(抽象的防御説VS具体的防御説)
・ 折衷的見解(判例)
あてはめ

※本問は難問であるが、決して基本部分(訴因の意義・機能など)を疎かにしないこと。
※本問は非常にあてはめが難しい。特に、通説である抽象的防御説に立ってしまうと、本問の特殊性に配慮することが困難になってしまう。この点、後で検討する。

2.概括的認定について

本問では、択一的な記載がなされているが、共謀共同正犯(刑法60条・199条)の同一構成要件内における事実認定(概括的認定)。
⇒罪となるべき事実の特定に重要でないならば、OK

あてはめ
→共謀共同正犯の場合、共謀が存在し共謀者の内誰かが実行行為に出れば、全員が共同正犯として処罰される

※ここは非常に書きづらい。判例に準拠せずとも、自分なりに書いても問題ないであろう。

※本問では、他にも訴因の特定(共謀の日時)等が問題となりうるが、「手続きにおける問題点」とあることから、特に問題とすることはないであろう。少なくとも、大展開は避けるべきである。

【出題者の意図】

(出題趣旨)
 本問は,共犯者のいる殺人事件を題材として,訴因の意義・機能,共犯者と実行行為者をめぐって生じる訴因変更の要否,裁判所による罪となるべき事実の判示としての概括的認定の可否等について,基本的知識の有無と具体的事案に対する応用力を試すものである。

 当然ではあるが、やはり判例で問題となった争点が聞かれている。しかしながら、「訴因の意義・機能」という超基本事項が、真っ先に書かれていることに着目して欲しい。論文試験は基本を聞く試験であることがよく分かるであろう。

【本問のあてはめについて】

 本問では①共犯者が乙から不明確へ②関与の態様が、単独実行共同正犯から単独or共同実行or共謀へと変化している。そこで、前述の様に、訴因変更の要否の論点に関し、通説である抽象的防御説に立ってしまうと、特殊事情に配慮することが難しくなってしまう。類型的・抽象的にみると、当然に被告人の防御に不利益が及んでしまうからである。
 しかしながら、無理な修正はやめておいた方が無難である。基本に対する理解を疑われる危険があるからだ。反対利益を出す程度で十分であろう。
 判例や具体的防御説に立たれる場合は、いずれの結論でも良いと思う。ただ、この場合も反対利益に配慮したあてはめを心がけて欲しい。

【合格答案の要件】

・ 訴因変更の要否について論じている。
・ 訴因の意義・機能をどこかで示す。
・ 概括的認定に触れている。

【上位答案の要件】

・ 訴因変更の要否のあてはめにおいて、本問の特殊性に配慮している。
・ 概括的認定について、本問の具体的事情を分析して、論じられている。

【講師の現場思考】

・ おっ!これは直前答練で出題された、判例ベースの問題だな!!でも、ここ苦手なんだよな(汗)。
・ 訴因変更の要否は、訴因の意義・機能からしっかり書こう。しかし抽象的防御説に立つと、あっさり必要という結論になってしまう。本問の事情の下では不都合な気がするから、修正をかけよう
→結果的に大失敗。抽象的防御説ではなくなってしまった・・・。
・ 択一的認定は、書き方がよく分からないんだよな。まあ、みんな苦手だから、あっさり書こう。
  →時間が無い上、あまり理解していなかったため、メチャクチャなあてはめに。

【刑訴法総括】

 第2問が難問。第1問も意外に出来が良くない人が多かったようだ。近年では、かなりハードな出題だったと言えよう。全体として、事前の準備によって、出来不出来を分けたといえる。
来年は、1問目は相変わらず捜査から、二問目は証拠法からの出題ではないか?特に、二問目は伝聞法則に注意したい。

                                                  以上

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平成19年度刑事訴訟法第1問分析
【問題文】

 警察官Aは,住居侵入被害発生の110番通報を受け,被害者B女方に赴いた。Bの説明は,「私はこの家に一人で住んでいます。先ほど居間で夕食をとっていると見知らぬ男がかぎの掛かっていない玄関から居間に上がり込んできました。悲鳴を上げるとその男は何もせずに逃げて行きましたので,すぐに110番しました。」というものであった。
 そこで,Aは,Bとともに付近を捜したところ,上記通報から約30分後に,B方から約200メートル離れたコンビニエンスストアで雑誌を立ち読みしている男性甲をBが認め,「あの男です。」と指示した。その直後,甲が同店から出てきたので,Aは,同店前路上において,甲に対し職務質問を開始した。甲の外見からは本件住居侵入を犯したことをうかがわせる証跡は認められなかったものの,甲がAの質問には何も答えずに立ち去ろうとしたことから,Aは,同所で,甲を本件住居侵入の現行犯人として逮捕した。さらに,Aは,その場で甲の身体を捜索し,着衣のポケットからカメラ機能付携帯電話,名義の異なる複数のクレジットカード及び注射器を発見したため,これらを差し押さえた。
 以上のAの行為は適法か。


【本問のポイント】

 例年通り、一問目は捜査からの出題。刑事訴訟法の捜査では、長年捜索差押出題されていたが、久々に逮捕からの出題であった。前半は現行犯逮捕の適法性、後半は逮捕の現場における捜索差押さえ(220Ⅰ②)の適法性の問題。
 一見して何を論じてよいか、すぐに分かる問題であり、論点落としは致命傷になる。もっとも、問題文が相当に具体的であり、あてはめで大いに差がつく。その意味で、当てはめ重視の問題であったといえよう。
 また、本問は前半・後半とも令状主義の例外である。そこで、原則たる令状主義に言及できているかも、一つのポイントとなる。

【捜査について】

 平成以降は、ほとんど出題がパターン化されている。大きく分けて、1.逮捕・勾留型、2.捜索差押型、3.非典型捜査方法型に分類される。2.の捜索差押型の出題が非常に多い。19年は捜索差押型と共に、久々に逮捕勾留型が聞かれた。
 捜査については、令状主義が何らかの形で絡む場合が非常に多い。
 捜査の問題では、捜査機関側の行為の適法性が問われている場合が多く、その場合は刑法のように、捜査機関側の行為を拾っていき、行為ごとに枠組みを作っていく。
 あてはめに大きな配点があるのも、捜査の特徴である。もっとも、いくらあてはめ重視と言っても、規範定立に至る過程で基本が聞かれるので、決して論理部分で手を抜かない。問題によっては、規範定立部分で勝負が決してしまう場合もある。

【現行犯逮捕の要件】

 現行犯逮捕・準現行犯逮捕の要件については、条文の文言から要件を定立する必要があるが、テキストによってその内容が異なっている。各自のテキストに拠ればよかろう。
参考までに、私の使っていた要件を挙げておく。ただ、どのような考え方に立つとしても、条文の文言は尊重すること。

・現行犯逮捕・・・①犯罪の現行性、または時間的接着性②犯罪・犯人の明白性③逮捕の必要性(その要否が論点)
・準現行犯逮捕・・・①相当程度の時間的場所的接着性②犯罪・犯人の明白性③212Ⅱ各号のいずれかの要件の充足④逮捕の必要性(その要否が論点)

【問題の分析】

問い=Aの行為の適法性

問題のある行為を拾っていく。
⇒「現行犯人として逮捕」と「差し押さえた」行為が問題となりそう。

※ここで、間違っても「職務質問」などは拾わないこと。

1. 現行犯逮捕の適法性

現行犯逮捕(212Ⅰ)を検討
令状主義の例外として、現行犯逮捕が許される趣旨(必要性・許容性)を説明。

要件定立①②(③)
⇒①・・・「30分後」「200メートル」
 ②・・・??

次に、準現行犯逮捕(212Ⅱ)を検討
合憲性がまず問題(必要性・許容性)

要件定立①②③(④)
⇒①・・・「30分後」「200メートル」「先ほど」「すぐに」
 ②・・・「あの男です」と指示
 ③・・・「証跡は認められない」「職務質問」「何も答えずに立ち去ろうとした」
 ④・・・「コンビニエンスストア」「立ち読み」

※ 本問で準現行犯逮捕を違法とするのは、良くない。220Ⅰ①の問題へつながらないからである。また、間違っても、緊急逮捕について検討してはいけない。
※ 当てはめは、事実を丁寧に評価すること。

2.捜索差押さえの適法性

現行犯逮捕が適法とすると、令状なき捜索差押も220Ⅰ②で適法になる余地。

もっとも、本問では対象物が、被疑事実である住居侵入罪とは無関係なものとも思える。
→対象物の範囲が問題
⇒緊急処分説→規範定立

あてはめ
→明らかに無関係とも思える。
↓しかし
・ 携帯電話・・・単なる携帯電話ではなく、あえて「カメラ機能つき」とある点が、怪しい。
・ 複数の名義のクレジットカード・・・盗んだものの可能性。
・ 注射器・・・覚せい剤?

※ 結論はどちらでも良いであろう。ただ、反対利益には必ず配慮すること。


【出題者の意図】

(出題趣旨)
 本問は,捜査において重要な端緒となる現行犯逮捕を題材として,現行犯逮捕及び逮捕の現場における捜索差押えが許容される趣旨・要件に関する基本的な理解を問うことによって,捜査についての基本的知識の有無と具体的事案に対する応用力を試すものである。

 「許容される趣旨」とあるので、原則たる令状主義への配慮を要求していると見て間違いなかろう。令状主義の例外として、前半・後段がリンクしている。

【合格答案の要件】

・ 現行犯逮捕と準現行犯逮捕の要件を挙げる。
・ 問題文の事実をしっかり使って、当てはめ。
・ 逮捕の現場における捜索差押さえの目的物の範囲について、220Ⅰ②の趣旨から、規範を定立。あてはめ。

【上位答案の要件】

・ 現行犯逮捕・準現行犯逮捕について、令状主義から論じている。
・ 問題文の事実を評価して当てはめ。
・ 携帯電話・カード・注射器について、丁寧に当てはめ。

【講師の現場思考】

・ 久々に現行犯逮捕が出た!狙い通り!!要件を丁寧に検討しよう。・・・令状主義の原則に配慮できなかった。
・ 220Ⅰ②はまた出たのか?!令状主義の原則から、丁寧に論じてやろう。規範も趣旨からロジカルに定立しよう。
・ 目的物は、どれも住居侵入罪に関係なさそうだな~。でも、あえて「カメラつき」とあるのだから、きっと使って欲しいんだろうな・・・。強姦目的として、強引に範囲に含まれるとするか。


                                                   以上

平成19年度民事訴訟法第2問分析
【問題文】

 甲は,乙に対して貸金債権を有しているとして,乙に代位して,乙が丙に対して有する売買代金債権の支払を求める訴えを丙に対して提起した。
 1  甲の乙に対する貸金債権の存否に関する裁判所の審理は,どのようにして行われるか。
 2  乙の丙に対する売買代金債権が弁済により消滅したことが明らかになった場合,裁判所は,その段階で,甲の乙に対する貸金債権の存否の判断を省略して,直ちに甲の丙に対する請求を棄却する判決をすることができるか。
 3  裁判所は,甲の乙に対する貸金債権は存在し,乙の丙に対する売買代金債権は弁済により消滅したと判断して,甲の丙に対する請求を棄却する判決を言い渡し,その判決が確定した。当該貸金債権が存在するとの判断が誤っていた場合,この判決の既判力は乙に及ぶか。


【本問のポイント】

 長年「出る出る」と言われ続けた、債権者代位訴訟の問題である。債権者代位訴訟は、他人間の権利法律関係について、当事者適格が認められるという特殊な訴訟形態である。そこで、債権者代位訴訟を論じる際は、常に当事者適格に留意する必要がある。
 本問は小問1が基礎的な知識を問う問題であり、小問2・3は比較的典型的な論点を聞く問題である。その意味ではそれなりの答案を作成するのは、それほど困難ではない。
 しかしながら、債権者代位訴訟の特殊性に留意しつつ、本問での具体的な利益状況について配慮し、各小問を統一的に解決しようとする姿勢が出ているか否かで、大きな差がついてしまう問題であったと言える。また、小問3には、かなりの応用が含まれている。やはり本試験である。

【問題分析】

1.小問1
問い=裁判所の審理はどの様にして行われるか?
※やや問いかけが曖昧なため、出題意図に気づけない受験生も多かったようだ。

貸し金債権の存否は、甲の当事者適格を基礎付ける事情(法定訴訟担当説)
→訴訟要件の存否の判断についての審理=職権調査事項

もっとも、当事者適格は本案の審理と密接に関係。
⇒弁論主義が妥当

また、本案の審理と密接なので、本案と平行審理される(小問2から気づける。小問2とのリンク)。

2.小問2
問い=貸し金債権の判断を省略して、請求棄却判決をすることの可否。

訴訟要件の存否についての判断を省略して、本案についての棄却判決をすることが出来るか?(論点)。
⇒通説・判例はNGと解する。

もっとも、これで話を終わらせない。本問の具体的事情に配慮。
⇒本問では、本案が不存在であると明らかならば、それ以上手続きを継続させても、無駄となる可能性が高い
→訴訟不経済・丙は早期解決を望む。

しかし、小問3で明らかになるように(小問3とのリンク)、乙には甲丙間の判決の既判力が及ぶので、甲に当事者適格があるか分からない状態で、請求棄却判決を出してしまうと乙の手続き保障を害する。
⇒先述の結論が妥当である。

3.小問3
問い=貸し金債権が存在するとの判決が誤っていた場合、既判力は乙に及ぶのか?

既判力の主観的範囲の問題
→115Ⅰ①
※必ず原則(115Ⅰ①)から丁寧に論ずる。趣旨も丁寧に論ずる。

小問1で述べたように、債権者代位訴訟は法定訴訟担当であり、115Ⅰ②で既判力が拡張される場面。
※ここも趣旨を丁寧に。
↓もっとも
債権者代位訴訟で債権者敗訴の場合にも、債務者に既判力は及ぶのか?(論点)
⇒及ぶ(通説・判例)
↓しかしながら
前述の様に、貸し金債権の存否は、当事者適格を基礎付けるもの。とすれば、その存否が不存在であり、当事者適格を欠く甲が訴訟追行したにも拘らず、既判力を乙にも及ぼすと、乙の手続保障を害するのではないか?・・・修正の必要性

115②で本人に既判力が拡張されるのは、当事者適格を認められるような第三者が訴訟を追行したから。
⇒とすれば、被保全債権を有せず、当事者適格が認められない者の訴訟追行により生じた既判力は、本人たる債務者に拡張されないと考えるべき。

※上記の考えは、あくまで一つのモデルである。第三者の応訴の負担や法的安定性、あるいは債務者の独立当事者参加が可能性を考えれば、当事者適格がない自称債権者の追行した訴訟の結果生じた既判力が、債務者に及ぶと考えることも出来よう。ここは応用であるから、いずれの結論を取ってもOKだと思う。重要なのは、既判力の拡張の根拠などから、丁寧に論じてやることである。

【出題者の意図】

(出題趣旨)
 当事者適格の訴訟要件としての訴訟上の意義と,その審理のあり方を問う問題である。1では,当事者適格が職権調査事項としてどのように審理されるかを,その存否の判断資料の収集方法を中心に論ずべきである。2では,当事者適格の存否の判断を省略して直ちに請求棄却の本案判決をすることの可否を,見解の対立も踏まえて論ずべきである。3では,当事者適格を欠いていることを見誤った確定判決に,判決としてどのような効力が認められるかを論ずべきである。

 上記分析とほぼ同様なことが、出題の趣旨には書かれている。冒頭の記述から、当事者適格が本問のポイントとなっていることは明らかである。小問間でのリンクが要求されていると見て、間違いなかろう。また、小問2では反対利益への配慮を明確に要求していることにも着目して欲しい。

【合格答案の要件】

1. 小問1では被保全債権の存否が、当事者適格を基礎付けることを説明した上、職権調査事項と弁論主義について言及していること。
2. 小問2では、訴訟要件と本案判決の先後関係について論じていること。
3. 小問3では、既判力の主観的範囲について、原則から論じられていること。
4. 債権者代位訴訟の特殊性から、債権者敗訴の場合は既判力を拡張すべきでないのではないかについて論じられていること。

【上位答案の要件】

1. 全体を当事者適格の観点から、リンクを図っている。
2. 小問2・3で、具体的な本問での状況を考え、利益の調整を図ろうとする姿勢が出ていること。
3. 小問3を、115Ⅰ②の趣旨から、丁寧に論じていること。

 小問形式の問題では、リンクできないかどうかを常に念頭に置くべきだろう。
 また、論点を事例問題で論ずる際は、単に覚えたものを貼り付けるのではなく、具体的にその事例でどのような利益対立が生じるかをイメージすべきである。そこで、普段の勉強の際も、その論点がどの利益とどの利益の対立関係かを常に意識することが重要である。

【ひでぽんの現場思考】

・ 上記の思考過程とほぼ同様の、流れを辿ることが出来た。
・ 小問3で問題文を読み違えた。不存在である債権が、非保全債権たる貸金債権ではなく、売買代金債権と間違えたのである。お陰で、115Ⅰ②の趣旨から修正を図ることが出来なかった。もっとも、答案を読む限りでは、それなりに充実した論証をしているので、結果的には大きな痛手にはならなかったようだ。基本部分は丁寧に論じられているので、十分なA答案となったようである。

【民訴の総括】

 一問目は完全な現場指向型の問題。対して、2問目は典型的ながら、非常に奥が深い本試験ならではの良問であった。書くべきこともかなり多い。
 一問目はいくら時間を掛けて量を書いても、内容面の質が上がるとは考えられないので、
短く端的に論じ、二問目に時間を使うべきである。くれぐれも、1問目で勝負をかけるべきではない。
 来年も、一問目が未知の一行問題であり、二問目が典型的ながら奥の深い問題が出題されることと思う。特に一行問題の現場での処理方法を確立しておくべきであろう。


平成19年度民事訴訟法第1問分析
【問題文】

 裁判所が争点整理又は事実認定に関して専門家の協力を必要と認めるときに,これを可能にするため民事訴訟法が定める方法について,各方法の目的及び内容の相違を明らかにしながら論ぜよ。

【本問のポイント】

 純粋な一行問題で、かつ事前の準備が全く役に立たない、完全な現場指向型の問題である。ほとんどの受験生にとって初見であり、考えたことのない問題であったと言えよう。しかしながら、ほぼ全員にとってゼロからのスタートであったので、現場で冷静に対処できたかどうかで、合否を分けた。
 鑑定には、ほぼ全員の受験生が気づいたものの、専門委員については、私を含めて、全く事前に知らなかった受験生も多かった。現場において条文を引けたかどうかが勝負の分かれ目になったようだ。目次から、項目を見て条文を探していく作業の重要性が大切であると、気づかされた問題である。
 未知の一行問題に対する対策は以下を参考にしていただきたい。

【一行問題対策】

1.傾向
 平成10年ほどまでは、単純な知識・概念の説明を要求される出題がほとんど。該当箇所の知識があれば、簡単に解けるような問題が多かった。
 その後、平成12年に原則とその例外を問う問題が出題される。更に、平成13年には
レベルの異なる二つの概念の関係を問う、知識では太刀打ちできない問題が出題されるようになる。
 平成17年に入り、それまで誰もが考えたことの無いような問題意識を問う出題がされるようになる。平成19年の問題は、ほとんどの人が見た瞬間に呆気にとられた、ぶっ飛んだ出題だった。

2.対策
(1)原則・例外パターン(H12・14・15)
 民法上の大原則について、定義・趣旨・現れから説明し、更にその例外について、認める必要性、原則との関係に配慮しつつ論じていく。
→最低限の知識が必要だが、ワンパターンで処理でき、比較的取り組みやすい。例外を認める許容性を、原則の趣旨から考えていくと、高得点が期待できる。

(2)異なるレベルに属する、複数の概念の関係を問うパターン(H13・16)
 各概念を説明しつつ、両者の関係を、その属するレベルに留意しつつ論じていく出題形式。双方が異なるレベルに属するため、一見無関係なように見えるが、実は相互に影響を与えているという場合が多い。
→単純な知識では太刀打ちできず、その概念に対する深い理解が必要。縦の四段階レベルと、横の手続の流れのレベルを意識すると、両者の関係に気づきやすい。
 ネタ切れのせいか、出題されなくなってしまった。

(3)既存の知識から外れたパターン(H17~)
 事前の準備がほとんど役に立たない、受験生泣かせの問題。来年以降も、この出題
形式が続くと考えられる。

平成17年・・・第一審の形骸化防止とそのための制度
平成18年・・・訴状の必要的記載事項の趣旨と、訴状却下についての説明
平成19年・・・専門家の関与の方法

こういったタイプの問題では、以下のようなことを心がけることが大切である。

・知識で解こうとしない。
・訳の分からない問題が出たら、とりあえずラッキーと思う。勝手に自爆する人が多いので、冷静になった時点で半分勝ち。
・まず条文を引いて、関連しそうなものを探す。目次から探す。
・問いに答えるように、答案構成を工夫する。内容面で勝負しにくいので、形式面を整える。
・マイナーな分野が聞かれていても、基本を大切に。答案全体から、民訴全体の理解が伝わるようにする。
・既存の知識が使えそうなら、使ってみる(平成17年→適時提出主義)。但し引っ張り込みには注意する。
・誰もが書けるところは、ややバランスを崩しても、しっかり書く(平成18年の前半部分)。難しいところに引き摺られない。
・平成19年のように取っ付きづらい問題は、民訴の大きな視点から、総論を作ると見栄えが良い。

【ひでぽんの現場思考】

・問題文を読んで鑑定には気づく。
・他の方法が思いつかず、とりあえず総論を作ることにする。
→弁論主義・自由心証主義から原則を示しつつ、適切な紛争解決という視点から、専門家の関与の必要性を示す。
・条文を当たり、専門委員に気づく。
→鑑定との相違点を探す。
→鑑定は承認と同様(点の関係)、それに対し専門委員は継続的に手続に関与(線の関係)と考える。
・ 問題分の指定に合わせるべく、目的と内容を説明するように心がける。ただ、専門委員については、条文を書き写しただけである。
・時間があったので、知財調査官についても付け加える。

【出題者の意図】

(出題趣旨)
 専門的知見を必要とする事件について民事訴訟法が用意する各種の制度(鑑定,専門委員,調査嘱託,鑑定嘱託,釈明処分としての鑑定,知財関係事件における裁判所調査官等)の理解を問うものであり,鑑定が専門的経験則又はそれを事実に適用した結果についての専門家の意見を証拠資料とするもので,当事者の申出を要すると一般に解されているのに対し,専門委員の説明は証拠資料ではなく,当事者の意見聴取を経れば専門委員を関与させられること等を論ずべきである。

 本問は、前述の様に受験生のほとんどに事前の知識が無かった問題である。事後的に、知識をインプットしたところで、本年度以降の対策にはほとんど役に立たない。それを念頭に置きつつ、出題者の意図を分析してみる。
 問題文には「裁判所が~認める時に、これを可能にする方法」とある。つまり、専門家関与一般について問われているのでなく、あくまで裁判所が必要と認める時のことについて問われている点に注意する。
 また争点整理「又は」事実認定とある点についても注意する。即ち、前者には職権進行主義が妥当し、後者には弁論主義が妥当するのである。
 そして、専門委員は専ら訴訟手続き整理のための制度であり、対して鑑定は、「証拠」の章に規定されている点からも、証拠方法についての制度である点にも気づくことができる。すなわち、両者は証拠として採用されるか否かの点において、決定的な違いがあるのである。
 そこで、鑑定の方法を採用するには弁論主義の観点から、当事者の申出が必要であり、対して専門委員については職権進行主義の観点から、当事者の意見を聴取すれば、裁判所の職権で採用することが可能なのである。本問は正にこの違いが問われた問題であったといえよう。

 ただ、しつこいようではあるが、決して細かい知識のインプットに走る勉強はしないこと。私は、前述のように、出題の趣旨に書かれているようなことについて、ほとんど書くことが出来なかった。それでも十分にAが付いている。試験委員の求めているレベルと、受験生のレベルの間の齟齬が著しい場合は、そんなものなのだ。司法試験が相対評価に過ぎないということが、よく分かるであろう。
 また、条文の重要性にも気づくことであろう。現場で条文をしっかり引いたからこそ、専門委員に気づくことができたわけであるから。

【合格答案の要件】
1. 鑑定と専門委員を挙げる。
2. その目的と内容を説明(形だけでOK)
3. 両者の違いに触れる。

【上位答案の要件】
1. 職権進行主義と弁論主義に触れる。
2. 両者が証拠方法か否かという観点から、意見聴取で足りるか、当事者の申出が可能かを論じる。
3. 他の制度を挙げる。


憲法人権あてはめ処理マニュアル
1.序論
 
 新試験の公法系では勿論、旧試験憲法の第1問(人権)でも、非常に詳細な事実掲げられている問題が出題される。こうした問題では、問題文の事実を使って、自己の定立した規範に当てはめることが要求されている。こうした傾向は、ロースクール既習者コースの入試でも同様であるようだ。
 なぜ、憲法の人権問題で当てはめが問われるのかというと、受験生の応用能力を確認するために他ならない。すなわち、判例をベースにした一部の問題を除いて、当てはめは事前準備が困難であり、現場思考による部分が大きいため、受験生の人権センス/事案処理能力を確認できるからである。
 この様な傾向は随分以前から続いて来たにもかかわらず、大学・予備校を含めて、当てはめに特化した講座・講義の類は非常に少なく、多くの受験生があてはめに四苦八苦しているのが現状である。規範を定立までは比較的スムーズに処理できても、その後詳細な事実を前にため息をついている方も多いのではないか?私も以前は同様であった。
 しかしながら、あてはめにも処理手順というものは存在し、ある程度処理をパターン化することができる。しかも、多くの受験生が苦手としている分野だけに、得意にすることで、他の受験生に差をつけることができる。ここに掲げてある処理手順等を参考に、あてはめの処理手順をしっかりと確立することで、是非ともあてはめを得意にして頂きたい。

2.あてはめの処理マニュアル

(1)あてはめの処理手順概観

① 問題文の事実中で特徴的な事実・使えそうな事実にマーク
② 問題文全体から、自分がとる結論と、用いるべき規範を先に確定(裁判官の視点)
③ 国側(被告側の視点)と国民側(原告側の視点)から、問題文の事実をそれぞれ見つめ、マーキングした事実について評価を加える
④ 自己の結論とは反対の立場に配慮しつつ、それに対する反論を考える(反対利益に対する配慮)
⑤ ③④を、「この点(確かに)~しかし~また~したがって」という流れに乗せる
⇒完成!!

(2)詳説

 ア.②について
  通常の訴訟では、原告と被告が意見をぶつけ合い、その過程で裁判官が結論を決定することになるであろう。しかし、論文試験において同様の過程を辿る必然性は全くない。むしろ、先に自分がいずれの結論を採用するか決定してしまった方が、当てはめ全体の流れを先に決することが出来て、後の事実のピックアップや評価(③)が上手くいくと思う。

 イ.③について
  この過程でポイントとなるのは、反対利益に配慮することと、事実に適切な評価を加えることである。これらについては後に詳述する。
心がけて欲しいのは、原告たる国民の側と、被告である国の側との双方から、事実をピックアップし、評価を加えることである。③よ④の過程を通じて、法曹に必要とされるバランス感覚を示すことが出来る。両者の主張に言及することが、問題文で特に指定されている新試験では勿論、旧試験でも反対意見に配慮することは、当然に要求されているのである。

ウ.④について
ここでも反対利益に対する配慮が要求される。また、自己の立場から、相手方の主張に対し、噛み合った反論をすることもポイントである。この点についても以下で詳述する。
 
エ.⑤について
 理想的な当てはめの流れは以下のようになる(違憲の結論の場合)。

 この点(確かに):国(被告)側に有利な事実+評価
 しかし:国民(原告)側に有利な事実+評価、被告側の主張を貫くことによるデメリット
     (以上が必要性)
 また :国民(原告)側に有利な事実+評価、国(被告)側の主張に対するフォロー
     (以上が許容性)
 したがって:結論(違憲)

 常に、「この点(確かに)~」からあてはめを始めることにより、反対利益に配慮することができる。ここでポイントになるのが、適切なナンバリングを心掛けることである。反対利益と、自己の立場でナンバリングを分け、更に自己の見解を述べる場合も、必要性と許容性とでナンバリングを分ける。こうすることによって、一目であてはめの構造が分かり、冗長な論述となることを避けることが出来るのである。
 
(3)あてはめを充実させる三つのポイント

 ア.規範の使い方

 あてはめを充実させるには、規範の構造を知らなくてはならない。自分の立てた規範に当てはめることが出来ないのでは、内容を充実させる以前の問題である。特に「実質的関連性」や「合理的関連性」といった抽象的な文言には気をつけることである。
  また、「明白かつ現在の危険の基準」や「明白性の基準」といった、違憲性あるいは合憲性の推定が強く働く規範は、反対利益に配慮しづらいというデメリットがある。逆に言えば、厳格な合理性の基準のような中間的な基準は、バランスの取れたあてはめも、またやりやすいと言えるだろう。
 もっとも、あてはめし易いからといって、論理を捻じ曲げてまで、規範を変更することは慎むべきであろう。また、反対利益に配慮しづらい規範を用いる場合であっても、必ず反対利益に配慮すること。
 また、多くの規範では、目的と手段双方の正当性(または重要性・必要性など)を検討することになるが、よっぽどのことがない限り、目的の正当性は認定すべきである。目的で切ってしまうと、問題文の事実を使いきれないからである。

イ. 反対利益に対する配慮

 当てはめを充実させるためにもっとも重要なポイントは、反対利益に配慮することである。当てはめの善し悪しは、ここで決することが多い。
 自己の見解の正当性を一方的に論じるだけでは、論述に深みがなく、バランス感覚に乏しい。また、反対の立場を示していても、これを叩かなければ、反対利益が浮いてしまい、かみ合わない議論になってしまう。場合によっては、反対利益の方が説得的になってしまい兼ねない。
 そこで、自己の見解を、センスよく、かつ説得的に論じるためには、反対利益に配慮した上で、これに適切な反論を加え、これを論破することが、重要となってくる。
このためには、②で国・国民双方の立場から問題文の事実を検討すること、③で反対の立場に対する反論として、反対利益を貫くことによって生じるデメリットの大きさ、自己の見解からの反対利益に対するフォローを考えることが有効となる。
 また、前述の③において、先に反対の立場から問題文の事実を検討し、後から自己の立場から検討するようにすると、反対の立場に対する反論を考えながら、事実を検討(④)することができ、効率的である。

 ウ.事実に対する評価

  問題文は相当程度具体的であるといっても、事実それだけをみると抽象的である。事実を引っ張って来て、単純に規範の文言にそのまま当てはめるだけでは、あてはめとして未完成である。具体的かつ説得的に、あてはめをするためには、事実に対して評価を加えることが重要となってくる。
  この、事実に対する評価を苦手とされている方が多いようだ。法的思考ではなく、一般常識が要求されてからかも知れない。コツは、原告あるいは国の立場から、問題文の事実をどの様にすれば、有利に援用できるかを考えてみることである。

(4)その他、あてはめを得意にするために

① とにかく多くの問題で実践すること
② 帰納的にあてはめをする場合は、注意すべき
③ 一つの問題について、合憲・違憲の結論双方であてはめしてみる
④ 裁判官或いは弁護士になったつもりで、あてはめを楽しもう!!


                                         以上

 以上のマニュアルを用いて、過去問を検討したいところであるが、
それはまた機会を改めて。

平成19年度商法第2問分析
【問題文】

 運送業を営むA株式会社は,小規模で同業を営んでいるB株式会社に自らの業務の一部を委託していた。B社では,これまで自らの商号によってその事業を行ってきたものの,仕事を得ることが難しくなってきた。そこで,A社は,B社の代表取締役Cに対し,「A社副社長」の肩書を付した名刺の使用を許諾し,さらに,B社は,事務所にA社の商号を表示した看板も掲げて事業を行うようになった。
 その後,B社は,次第に資金繰りが悪化し,事業の継続が事実上困難となってきたが,Cは,上記の名刺を用いて,DからB社の事業に用いている自動車の部品を100万円で購入し,Dは,B社の上記事務所において,相手方をA社と誤認して,当該部品を引き渡した。しかし,その代金は,Dに支払われなかった。
 Dは,A社,B社及びCに対し,それぞれどのような責任を追及することができるか。

【商法二問目の出題傾向】

 商法では例年、1問目に会社法が、2問目には手形法・総則が出題される。近年は、手形をベースに、総則や会社法の論点も含んだミックス問題が多く出題され、総則プロパーな問題は、15年以来出題されていなかった。
 ところが、本問は会社法と総則のミックス型問題であり、多くの受験生が現場で我が目を疑った。おそらくは18年の問題で、手形プロパーの問題が出題された反動ではないかと思う。
 ただ、一部で言われている、「今後手形は出題されない」などという流説は絶対に信じてはいけない。出題傾向は5~10年単位で分析すべきであり、一年だけを見て、翌年の出題を決め付けることは避けるべきである。私は、20年は確実に手形から出題されると考える。十分な準備をすべきである。

【本問のポイント】

 論点そのものは超典型的であり、かつ事案の把握も容易であって、かなり基本的な問題だといえよう。このレベルの問題は、予備校の論点つぶし系答練でもよく出題される。したがって、論点を落とすとかなり致命的で、一気に真ん中以下になる危険がある問題だと考えるのが、普通とも思える。
 ただ、実際には、多くの受験生が論点落としをしてしまっている。一問目で分析に時間を使いすぎて、二問目で時間不足に陥り、焦って不十分な論述に終わった人が多かったのであろう。やはり、論文試験では、二通揃って評価の対象になるということを再確認すべきであろう。バランスを重視することが重要である。
 また、会社法改正により、名板貸人等の条文が変更になったことにも注意すべきである。司法試験では、条文にも配点は当然ある。かかる点を決して疎かにすべきでない。会社法ではなく、総則の条文を引いてしまった受験生が多かったようである。

【答案構成】

1.B社への責任追及(原則)
 C=代表取締役・・・代表権あり(349Ⅰ・Ⅲ)
 →B社に効果帰属
 →代金支払い請求(民555)、損害賠償請求(民415)、
  解除による原状回復請求(民541・545)
 →不都合性(事実を使う)

2.A社への責任追及
 原則:追及できず
 修正の必要性
(1)法律構成1:354
  直接適用×
  類推(趣旨)
     ・「副社長」
     ・「付した」?→認定
     ・「善意」・・・意義
(2)法律構成2:9
   直接適用?
     ・ 「許諾」?(趣旨)→認定
     ・ 「誤認」
3.Cへの責任追及
  429Ⅰ
     ・ 「悪意」「重大な過失」
    →意義(趣旨)
     ・ 「損害」
     ・ 因果関係

 ※ 354条類推については、後記浦和地裁判決が否定するように、やや無理がある法律構成ではある。元取締役や従業員については、会社そのものと一定の関係があり、類推を認めても、さほど会社に酷であるとは言えないが、本問でCは、A社とは全く無関係の者であるからである。
 ※ B社の責任から検討したほうが良いと思う。B者に対する責任追及が、いわば原則であり、そこを示さないと、修正の法律構成である名板貸人の責任などが流れよく論じられないからである。

【合格答案の要件】

・A・B・Cについて、全て責任を検討。
・B・・・契約責任を明示。
・A・・・名板貸人の責任。趣旨の明示も必須であろう。
・C・・・429Ⅰの検討
→意外に、レベル低い。

【上位答案の要件】

・B→A→Cの順で検討。
・修正の必要性を、問題文の事実を用いて明示。
・354の類推について書く。
・429Ⅰの趣旨を書く。
・具体的事実を用いた認定。
・浦和地裁の判決を意識している

【出題者の意図】

(出題趣旨)
 本問は,役員である旨の肩書の付与により他社の商号の使用の許諾を受けた株式会社の代表取締役が第三者と取引を行って損害を与えた場合について,当該他社,当該株式会社及び当該代表取締役がそれぞれどのような根拠で第三者に対して責任を負うかを問うものである。解答に際しては,当該他社の名板貸人としての責任,当該株式会社の契約責任及び当該代表取締役の第三者に対する責任について,整合的な論述をすることが求められる。

 ごくごく当たり前のことしか書かれていない。やはり、何の捻りもないストレートな出題だったということだろう。ただ、表見代表取締役についての記述が見当たらないのは、法律構成として、やや無理があるからだろうか?

【浦和地裁判決】

 平成11年8月6日判決。本問の元ネタであろう。会社外部の者+肩書き付き名刺の使用の許諾に過ぎないので、表見代表取締役の類推を否定しつつ、名板貸しにより責任を認めた。
 ただ、単なる問題作成上の元ネタに過ぎず。知識として要求されているわけではないことに注意すべきである。くれぐれも、マニアックな判例リサーチ的勉強に走るべきでないことは言うまでもない。予備校等が言うような「判例学習の重要性」を、額面どおり受け取っていけないのである。

【ひでぽんの現場思考】

・ガーン・・・(涙)。あれだけ手形やったのに、出なかった・・・。
・(気を取り直して)会社法と総則のミックス型問題か。しかし簡単な問題だな。これなら、大丈夫そうだ。
・原則的である対B社に対する請求から書き始めよう。その後修正の必要性を丁寧に認定しよう。
・次は、メインたるAの責任だな。名板貸人と表見代表取締役を書けるな。繋ぎが難しいので、少し工夫が必要だな。
・Cは429Ⅰ位しか書くことが無いな。趣旨からある程度丁寧に論証するか。

【商法総括】
1問目の分析に時間を取られて、2問目に十分な時間を割けなかった受験生が多かった模様。2問とも無難にまとめれば、Aが付いてしまったようだ。両問間でのバランスの重要性を再認識させられる問題だったと言えよう。


平成19年度商法第1問分析
【問題文】
 甲株式会社は,ホテル業を営む取締役会設置会社であり,代表取締役会長A及び代表取締役社長Bのほか,Bの配偶者C,弟D及びAの知人Eが取締役に就任している。
 乙株式会社は,不動産業を営む取締役会設置会社であり,代表取締役Cのほか,B及びDが取締役に就任している。
 Bは,大量の不稼動不動産を抱えて業績が悪化した乙社を救済するため,同社の所有する土地(以下「本件土地」という。)を甲社に5億円で売却しようと考え,その承認のための甲社取締役会を招集した。入院中のAを除いたB,C,D及びEの4名が出席して取締役会が開催され,当該取締役会において,Bが本件土地の売買についての重要な事実を開示してその承認を求めたところ,Eから5億円の価格に難色が示されたものの,Bからバブル時代の土地価格を考えれば5億円の価格は決して高くないとの発言があっただけで,価格の相当性について議論がされることはなく,Cを議決に加えずに採決が行われた結果,Eは棄権したが,B及びDの賛成により本件土地の購入が承認された。
 そして,Bは,甲社を代表して,乙社との間で本件土地を5億円で買い受ける売買契約を締結し,所有権移転登記手続と引換えに代金5億円を支払い,さらに,遅滞なく,本件土地の売買についての重要な事実を甲社の取締役全員が出席する取締役会で報告した。
 その後,上記売買契約当時の本件土地の価格は,高く見積もっても3億円を超えないことが判明した。
 甲社は,A,B,C,D及びEに対し,それぞれどのような責任を追及することができるか。



【本問のポイント】
問題文の分析勝負の問題。本文はかなり複雑な事案。
しかも、展開すべき論点がほとんど無い、非論点型の問題。
⇒問題文を正しく分析できれば、その時点で真中以上確定。

対策として、時間をかけて正しく分析。図をしっかり描いて、各取締役がいかなる役割を果たしているかをしっかりと把握すべき。

《各取締役の役割》
1.B・・・取引を決定→取締役会を招集、重要な事実を開示、決議に賛成
      事後の報告
2.C・・・Bの妻、乙社を代表、決議には加わらず
3.D・・・Bの弟、決議に賛成
4.E・・・Aの知人、金額に難色、棄権
5.A・・・代表取締役会長、入院、事後的な報告は受ける

【答案構成】
1.Bの責任
 423Ⅰ
  ・任務懈怠
   利益相反認定(趣旨)
   →423Ⅲ②により推定(趣旨)
  ・悪意・有過失(二元説)
  ・損害
  ・因果関係
2.Cの責任
 423Ⅰ
  ・任務懈怠
   423Ⅲ①で推定
  ・
  ・
  ・
3.Dの責任
 423Ⅰ
  ・任務懈怠
   423Ⅲ③で推定
  ・
  ・
  ・
4.Eの責任
 423Ⅰ
  ・任務懈怠
  →330・民664、355
  ・
  ・
  ・
5.Aの責任
 423Ⅰ
  ・任務懈怠
  →否定が通常
  ・
  ・
  ・

【合格答案の要件】
1.423Ⅰの要件をしっかり検討(二元説or一元説)
2.事実認定をしっかり行う。
3.356Ⅰ②、423Ⅲの趣旨を書く。
多少の事実の混乱は致命傷にならない。

【上位答案の要件】
1.事実認定を正確かつ丁寧に行う。特に各取締役の役割に留意する。
直接取引であることを示す。
2.369Ⅱを用いる。決議の無効。利益相反取引の効力に言及する(軽くでOK)。
3.連帯責任(430)に言及。
4.責任の程度が重い取締役から検討。

【出題者の意図】

(出題趣旨)
 本問は,取締役会の承認決議を経て行われた利益相反取引によって会社に損害が生じた場合合について,利益の相反する取締役,当該取引を行った取締役並びに承認の決議に賛成した取締役,棄権した取締役及び欠席した取締役がそれぞれどのような要件で会社に対して責任を負うかを理解しているかを問うものである。解答に際しては,特別の利害関係を有する取締役の範囲と本件承認決議の効力,利益相反取引の効力及び会社の損害についても,論述する必要がある。
 
 出題の趣旨を見ると、前半部分については、当然のことが書かれていて、この点問題はない。問題は、「解答に際しては~」以降の記載。多くの受験生がその存在に何となくは気づきながらも、パスした論点が4つも書かれているのだ。しかしながら、これらの論点を展開しなくても、十分にA答案になっている。むしろ書いた合格者の方が圧倒的に少数派。使い方としては以下が考えられる。
 ①損害の認定で用いる。②取締役の責任、特に423Ⅲの推定規定が適用されないEやAの任務懈怠責任を認定する際に用いる。
 おそらく試験委員は①を想定していたのであろう。BDが特別利害関係人に該当すると考えると、BDが参加した本件承認決議は無効となる。とすると、たとえ通説である相対的無効説に立っても、本件利益相反取引は無効となり(Cは悪意なので)、会社に不当利得返還請求権が発生する。そうすると、法律上は損害が存在しないのではないか?以上のように論じると、記載された全ての論点を使いきることができるからだ。
 ただ、現場で気づけるかというとかなり疑問があるし、たとえ気づいても、展開するには相当な勇気も要るはずだ。パスもやむを得ないであろう。また、いずれにせよ、流れに乗らないのに、強引に展開するのはあまり良くない。


【ひでぽんの現場思考】
・ 責任追及で、しかも損害が生じているので、取締役の損害賠償の問題と気づく。
・ 明らかに利益相反が問題なので、趣旨に言及しよう。
・ 423Ⅰの要件は丁寧に検討しよう。事実認定勝負の問題だから、それでAが来るだろう。
・ 利益相反だから、423Ⅲに言及しよう。ここでも趣旨に言及しよう。
・ 間接取引か直接取引かで迷う→間接取引(3号)で書く。
・ 明らかに取締役会の議決の効力を聞いていそうだが、どこで書くのかわからない。→スルーする。





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