ひでぽんの司法試験あれこれ
旧司法試験をメインテーマに、その対策や分析について、徒然なるままに書いていきたいと思います。
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平成19年度刑事訴訟法第2問分析
【問題文】

 検察官は,甲を,「被告人は,乙と共謀の上,平成19年3月4日,東京都内のX公園駐車場の自動車内で,殺意をもって,被告人において,Aに対し,その頸部をロープで絞め付け,よって,そのころ,同所で,Aを窒息死させたものである。」との事実で起訴した。甲は,公判において,「自分はその場にいたが,犯行に関与しておらず,本件は,乙とは別の男がやった。その男の名前は知らない。」旨弁解して無罪を主張した。
 証拠調べの結果,裁判所は,乙とは断定できないが,現場に共犯者がおり,これと甲が共謀したことは明らかであるとして,「被告人は,氏名不詳者と共謀の上,平成19年3月4日,東京都内のX公園駐車場の自動車内で,殺意をもって,被告人又は上記氏名不詳者あるいはその両名において,Aに対し,その頸部をロープで絞め付け,よって,そのころ,同所で,Aを窒息死させたものである。」との事実を認定し,有罪判決を言い渡した。
 以上の手続における問題点について論ぜよ。


【本問のポイント】

 刑訴法の第二問は、5年ぶりに公訴の分野、訴因変更の要否から出題された。また、択一的認定も聞かれている。
 本問はかなりの難問であると言えるが、本問のベースになった平成13年4月11日の最高裁決定が非常にトピカルなものであったため、以前から出題が予想されていたところであった。本問は現場での分析が非常に困難な問題であることからすると、事前の準備を行っていたかどうかで、大きな差がついた問題だったようだ。その意味で、帰納的に分析すべき問題だったと言える。
 ベースとなった判例とは微妙に事案が異なっているものの、前記決定と同様、択一的認定(概括的認定)の可否、訴因変更の要否が問題となる。後述の様に、その他付随的な論点も拾うことが可能はあるが、この二つがメイン論点となっているとみて間違いなかろう。

【刑訴法第2問の傾向】

 前回に述べた通り、第1問は捜査からの出題という事で安定しているが、第2問は証拠法からの出題が多いものの、その他の分野からの出題も少なくない。その中では、今回出題された訴因変更等、「公訴」の分野からの出題が多いと言えよう。訴因変更の要否については平成12年以来、択一的認定については平成11年以来の出題となっている。平成15年から18年まで、実に4年連続で伝聞法則がメインとして聞かれており、そろそろ別分野からの出題が予測されていたところである。
 第2問の問題は、捜査に比べて、あてはめの比重がやや下がり、より原理原則についての基礎知識・規範定立までの枠組みが大切となってくる。大半の場合は、そこまでで勝負が決していることがほとんどである。もっとも、訴因変更の可否の問題では規範定立部分までは暗記で対応できることから、あてはめ如何で勝負が決まってくるし、伝聞も問題文の事実を条文にあてはめられているかどうかで、点数が変わってくることから、あてはめにも注意を払うべきである。

【問題の分析】

問い=手続きにおける問題点

・ 認定事実と訴因記載の事実が異なる
⇒訴因変更を経ずして、事実認定が出来るのか?(訴因変更の要否)
・ 「被告人又は上記氏名不詳者あるいはその両名において」というかなり曖昧な事実認定
⇒罪となるべき事実の特定があるといえるか?(概括的認定の問題)

※前述の様に、現場で枠組みを考え付くのがかなり難しい問題である。
※両論点は論理的先後関係がないといえ、どちらを先に書いてもOKであろう。

1. 訴因変更の要否について
   
審判対象論(公訴事実対象説説VS訴因対象説)・・・当事者主義
⇒訴因対象説

訴因の意義⇒事実記載説
→もっとも、些細な事実の変化があれば変更が必要となると、訴訟経済に反する
⇒重要な事実の変化があった場合

訴因の機能(識別説VS防御説)
⇒重要な事実の変化
・ 識別説→審判対象を明示するという機能を害するか?
・ 防御説→被告人の防御に不利益があるか?
⇒被告人防御に不利益があるかの判断基準(抽象的防御説VS具体的防御説)
・ 折衷的見解(判例)
あてはめ

※本問は難問であるが、決して基本部分(訴因の意義・機能など)を疎かにしないこと。
※本問は非常にあてはめが難しい。特に、通説である抽象的防御説に立ってしまうと、本問の特殊性に配慮することが困難になってしまう。この点、後で検討する。

2.概括的認定について

本問では、択一的な記載がなされているが、共謀共同正犯(刑法60条・199条)の同一構成要件内における事実認定(概括的認定)。
⇒罪となるべき事実の特定に重要でないならば、OK

あてはめ
→共謀共同正犯の場合、共謀が存在し共謀者の内誰かが実行行為に出れば、全員が共同正犯として処罰される

※ここは非常に書きづらい。判例に準拠せずとも、自分なりに書いても問題ないであろう。

※本問では、他にも訴因の特定(共謀の日時)等が問題となりうるが、「手続きにおける問題点」とあることから、特に問題とすることはないであろう。少なくとも、大展開は避けるべきである。

【出題者の意図】

(出題趣旨)
 本問は,共犯者のいる殺人事件を題材として,訴因の意義・機能,共犯者と実行行為者をめぐって生じる訴因変更の要否,裁判所による罪となるべき事実の判示としての概括的認定の可否等について,基本的知識の有無と具体的事案に対する応用力を試すものである。

 当然ではあるが、やはり判例で問題となった争点が聞かれている。しかしながら、「訴因の意義・機能」という超基本事項が、真っ先に書かれていることに着目して欲しい。論文試験は基本を聞く試験であることがよく分かるであろう。

【本問のあてはめについて】

 本問では①共犯者が乙から不明確へ②関与の態様が、単独実行共同正犯から単独or共同実行or共謀へと変化している。そこで、前述の様に、訴因変更の要否の論点に関し、通説である抽象的防御説に立ってしまうと、特殊事情に配慮することが難しくなってしまう。類型的・抽象的にみると、当然に被告人の防御に不利益が及んでしまうからである。
 しかしながら、無理な修正はやめておいた方が無難である。基本に対する理解を疑われる危険があるからだ。反対利益を出す程度で十分であろう。
 判例や具体的防御説に立たれる場合は、いずれの結論でも良いと思う。ただ、この場合も反対利益に配慮したあてはめを心がけて欲しい。

【合格答案の要件】

・ 訴因変更の要否について論じている。
・ 訴因の意義・機能をどこかで示す。
・ 概括的認定に触れている。

【上位答案の要件】

・ 訴因変更の要否のあてはめにおいて、本問の特殊性に配慮している。
・ 概括的認定について、本問の具体的事情を分析して、論じられている。

【講師の現場思考】

・ おっ!これは直前答練で出題された、判例ベースの問題だな!!でも、ここ苦手なんだよな(汗)。
・ 訴因変更の要否は、訴因の意義・機能からしっかり書こう。しかし抽象的防御説に立つと、あっさり必要という結論になってしまう。本問の事情の下では不都合な気がするから、修正をかけよう
→結果的に大失敗。抽象的防御説ではなくなってしまった・・・。
・ 択一的認定は、書き方がよく分からないんだよな。まあ、みんな苦手だから、あっさり書こう。
  →時間が無い上、あまり理解していなかったため、メチャクチャなあてはめに。

【刑訴法総括】

 第2問が難問。第1問も意外に出来が良くない人が多かったようだ。近年では、かなりハードな出題だったと言えよう。全体として、事前の準備によって、出来不出来を分けたといえる。
来年は、1問目は相変わらず捜査から、二問目は証拠法からの出題ではないか?特に、二問目は伝聞法則に注意したい。

                                                  以上
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