ひでぽんの司法試験あれこれ
旧司法試験をメインテーマに、その対策や分析について、徒然なるままに書いていきたいと思います。
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平成19年度憲法第2問分析
【問題文】

 「内閣は,条約を締結する際,その条約の合憲性について,最高裁判所の見解を求めることができる。最高裁判所が違憲であるとの見解を示した場合は,内閣はその条約を締結することはできない。」という趣旨の法律が制定されたと仮定する。この法律に含まれる憲法上の問題点について論ぜよ。

【本問のポイント】

 憲法の第2問は、例年統治の問題が出題される。比較が問われた17年・18年と異なり、19年の問題は所謂純粋な原則・例外型の問題である。また、テーマは条約についての各機関の権限関係である。
 条約は、昭和の時代に何度も論文で聞かれた、頻出テーマの一つである。そこにまつわる論点も多数ある、統治の重要分野であるにもかかわらず、平成に入ってから全く出題されてこなかった。おそらく、条約に関連する論点は典型的なものばかりで、予備校の論証パターンを貼り付ければ処理できてしまうことから、論点外しの傾向があった、平成以降の出題に上手く乗らなかったからではないかと考えられる。
 しかしながら、本問は典型論点が多く関わりながらも、それらの論点を処理するだけでは出題意図にとても迫ることが出来ない、本試験ならではの素晴らしい問題に仕上がっている。私も問題分析をしながら、その奥深さに気づき、かなり驚いた。本問を一目見て、取り組みやすそうだなと感じた方は、注意が必要である。実際、受験生のレベルはかなり低い。

【統治の出題傾向】

 憲法第2問は、前述したとおり、例年統治の分野から出題される。近年の統治の出題パターンとしては、大きく分けて3つある。一つが、所謂比較型問題、次に原則・例外型、最後は上記二つのパターンに乗らない、論点型の問題である。
 一番目の比較型は、文字通り複数の概念の比較が要求されている問題である。このパターンでは、二つの概念について統治機構の基本原理から相違点を探し、両者を比較していくことになる。平成6・12年の問題がこれに当たる。
 二番目の原則・例外型は、一見すると憲法上の原則に反するような、法律の合憲性や概念について聞くことで、その原則に対する例外が何処まで認められるかを問うパターンである。平成8・9・10・13・15・16年当たりが、このパターンであると言えよう。
3番目は、上記二つのパターンに当てはまらない、比較的典型的な論点処理をした上で、自分の立てた規範への当てはめが要求されている問題である。近時では、平成14年の問題がこれに当たる。
統治ではこれらの型がミックスされることも多く、平成17・18年は、原則に対する例外が問われつつ、二つの概念の比較についても問われた、原則・例外型と比較型のミックス型問題であったと言えよう。平成19年の問題は、前述の通り、原則例外型の問題であった。出題の形式としては、平成13年の第2問に酷似していると言える。
 ここまで見てきたように、近時の出題のほとんどが原則・例外型である。これは、前述したような、論点外しの意図があるからではないかと考えられる。このパターンによると、未知の問題を作りやすいのである。このことは、論点処理で対応出来る問題が、平成10年以降では、平成14年のみの出題に止まっていることからも裏付けられる。
 平成20年度も、原則・例外型、若しくは原則・例外型と比較型のミックス問題が出題される可能性が非常に高いと考えられる。

【問題の分析】

1.どの条文・原則に反するか?
「条約を締結する際」「条約を締結することは出来ない」
→内閣が自由に条約を締結できなくなり、内閣の条約締結権を制約
⇒73③に反しないか?

※原則があまりメジャーなものではないが、内閣の条約締結権については、過去問でも何度か聞かれているところである。

2.原則の趣旨
73③の趣旨=条約は相手国との継続的な交渉が必要、扱う内容も国際関係についての高度な政策判断能力が必要なものが多い
⇒迅速性・恒常性・専門性・技術性に優れた、内閣に帰属させるのが適切

3.例外の必要性(反対利益)の検討
本問法律の趣旨=違憲の法律の出現を防止すること

そもそも条約が違憲となりうるか?
→一元説or二元説(論点)
⇒二元説
→憲法と条約の効力関係(論点)
⇒憲法優位説

本問法律の趣旨も一定程度合理性がある

4.両者の比較衡量
(1)反対利益への配慮
そもそも、条約に対する違憲審査権(81)は認められるか?(論点)
→認められる(法の支配)
↓とするなら
最高裁に条約が憲法に反するかどうかの見解を求めることを認めた方が、違憲の条約を阻止することになり、良いとも思える(必要性)
↓また
「求めることができる」と規定されており、内閣に見解を求めることを強制しているわけではなく、内閣の条約締結権を大きく侵害するものではないとも考えられる(許容性)

(2)自己の結論の正当性
違憲審査権の性格(論点)
→付随的審査制(司法権の意義)
⇒締結前に、最高裁が合憲性についての見解を示すということは、実質的に抽象的違憲審査制を認めたのと同様の効果が生じる
↓そして
最高裁が違憲という見解を示すと、内閣は「締結することはできない」
→内閣の権限に対する制限は、やはり大きい
⇒73③の趣旨が果たされない危険がある
↓また
憲法は、外交権限を内閣に多く与え、裁量の余地を大きく与えている(72条・73②など)
⇒なるべく、締結にあたり大きな制約を設けないことを、憲法自体が要請している
↓更に
憲法は73③で条約の締結を内閣の権限としつつ、61条・73③ただし書で国会の承認を必要とする
→この趣旨は、内閣の締結した条約について、国民の代表機関がその内容についてチェックし、条約に対する民主的コントロールを及ぼそうとするもの
⇒内容が憲法に適合したものかは、まず民主的機関たる国会が判断すべきであり、非民主的な機関たる、裁判所の判断を先行させるべきでない。
↓よって
違憲

※ 本問では、上記に挙げたように、条約にまつわる様々な論点に触れていかなくてはならない。しかしながら、論ずべきことが多数あり、しかも直接的には論点を問う問題ではないので、一つ一つの論点については、簡潔に論ずべきであることは言うまでもない。
※ 本問法律は、抽象的違憲審査制そのものを認めるものではないことに注意すべきである。条約の締結前には、法規範としての効力は生じていないからである。

【出題者の意図】

(出題趣旨)
 本問は,内閣が条約を締結するに際し,その合憲性について最高裁判所の見解を求めることができるかという点について,違憲審査権の性格,司法権の意義,憲法と条約の関係,国会の条約承認権等に関する基本的理解を踏まえながら,論理的記述ができるかどうかを問うものである。

 上記の分析と同様のことが書かれている。原則部分が、憲法上の大原則とは直接に関わらない、比較的マイナーな所ながら、本来応用部分であるはずの、反対利益や両利益の調和の部分で、条約にまつわる超基本的論点について色々触れていかなくてはならないという、非常に良くできた問題である。しかも、論パ貼り付けでは絶対に対応しきれない問題であるところもミソである。20年度もこういった傾向が続くのではないか?

【合格答案の要件】

・ 原則である73条③を提示し、その趣旨を示す
・ 反対利益を示す
・ 憲法と条約の効力関係について論ずる(簡潔でOK)
・ 条約に対する違憲審査の可否について論ずる(簡潔でOK)
・ 違憲審査権の性格について、司法権の意義から論ずる

※大してレベルは高くない

【上位答案の要件】

・ 「 」内にある法律の内容について、しっかりと配慮して論じている
・ 両者の利益に配慮する中で、反対利益について丁寧に配慮できている
・ 国会の条約承認権の趣旨について言及できている

【講師の現場思考】

・ おっ!原則・例外型の問題か!!
・ まずは、憲法上の原則を提示だな!内閣の条約締結権に対する制約だから、73③か。しかし、マイナーな原則だな・・・。過去問では良く出ているけど・・・(少し不安)。
・ 趣旨は準備してあったものを、丁寧に示そう。行政権のキーワードを出来るだけ提示しようか。
・ 次に、反対利益だが、これは簡単だな。違憲の法律の出現の防止と・・・・んっ!?まずは、憲法と条約の効力関係を論じなければ、この法律の趣旨の合理性は認められないぞ!ということは、二元説についても簡単に触れておこうか。
・ 待てよ!?更に条約に対する違憲審査の可否についても論じないとダメだな!反対利益のところで、条約についての基本論点を聞いてきているのか?すごい問題だな!
・ 両者の調和だが・・・。そうか!!この法律を認めると、実質的に抽象的審査制を認めるのと同じ効果が生じるぞ。ここで違憲審査権の性格を論じればよいのか!!ここはメイン臭いから、司法権の意義からしっかりと論じてやろう。
・ 他にも司法権の独立や、憲法上の条文を示そう。
・ そうだそうだ。この手の問題は「 」内にポイントが隠されているんだよな。両者の利益を調和させる中で、しっかり言及するようにしなくては。

【憲法総括】

 1問目は、出題が予測されていた分野。2問目も応用であり奥が深いものの、そこまで分析が難しい問題だとは思えない。しかしながら、受験生の出来は芳しいとは言えない。やはり、憲法は論文試験一科目であり、平常心で受験するのは難しいからかも知れない。
 憲法ではとにかく落ち着いて受験することが大切である。ここで躓くと、精神的ダメージが大きくなり、一日目の成績に悪影響を及ぼす危険が高いからである。無難な答案でもよしという位の気持ちでも良いだろう。無理して攻めようとしないことが肝要である。

                                                        以上
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